こんにちは、編集長です。
2月24日は、モノづくり推進会議が開催した「ロボット研究会 第8回公開討論会」を聞きに行ってきました。テーマは「次世代ロボットの研究最前線とモノづくり」。
講演者は、産業技術総合研究所 知能システム研究部門 ヒューマノイド研究グループ 主任研究員の梶田秀司さんと、THK株式会社 事業開発統括部 クリエイティブプロデューサーの永塚正樹さんです。
梶田さんの講演は「産総研におけるヒューマノイドロボット研究」でした。まずは、昨年発表した「HRP-4」の紹介にはじまり、それに至るまでの産総研でのヒューマノイドロボット開発の歴史が紹介されました。1996年に行わていた「実時間2足歩行制御の研究」の動画を見せていただいたのですが、そのときのロボットから今のHRP-4を見ると、進化のスピードがものすごいなと思いました。

産業技術総合研究所 知能システム研究部門 ヒューマノイド研究グループ 主任研究員の梶田秀司さん

1996年に梶田さんが行った実時間2足歩行制御の研究です

HRP-2P(2002年)からHRP-4(2010年)までの、産総研で開発されたヒューマノイドロボットたち
1998年から2002年まで行われていた経済産業省による「人間協調・共存型ロボットプロジェクト」(HRP-1、HRP-2P、HRP-2)や、NEDO基盤技術促進事業「実環境で働く人間型ロボット基盤技術の研究開発」(HRP-3P、HRP-3)も紹介されました。バックホウをHRP-1が操縦したり(HRP-1を遠隔で操縦している)や、HRP-2と一緒に机を持つといった共同作業の動画を見せていただきながらの説明でした。

「人間協調・共存型ロボットプロジェクト」での、HRP-1で行われた産業車両(バックホウなど)の代行運転
さて、次は「二足歩行を実現するための技術」が説明されました。ロボットが運動するにつれて、床反力の中心は移動するのですが、床反力中心はさせている足の範囲内になければならないのです(そうしないと転倒してしまう)。床反力の中心の移動から、腰がどう動くか計算してロボットの運動を生成すると転倒しなくなるそうです。このあたりの詳細は、ぜひ『ヒューマノイドロボット』を読んでいただければと思います。歩くだけでも数学は大切、と梶田さんはおっしゃっていました。
では、ヒューマノイドの応用はどうするか。そこで紹介されたのが「HRP-4C」。「サイバネティック・ヒューマン」と呼ばれるこのロボットは、人間のプロポーションに近い機構を持っています。よくメディアで「美少女ロボット」と呼ばれていますが、開発初期の外観デザイン候補には、もっと人間的なデザインもあったそうです。

HRP-4Cの初期の外観デザイン案。
HRP-4Cは人間に近い動作性能を持っていて、音声認識によるインタラクションも可能です。2009年の発表以降、ユミ カツラのウェディングドレスのモデルをしたり、CEATECで歌ったり、DC EXPOで演技も披露しました。2010年のCEATECでは、歌い方をまねて音声合成をする技術である「VocaListener」と顔の表情をまねてロボットの歌唱動作を生成する技術である「VocaWatcher」により、より自然な歌声と表情による歌唱を披露しました。DC EXPOではダイナミックなロボットの動作を生成できる「Choreonoid」により生成したダンスも披露しました。今年も、いくつかイベントの参加が予定されているようです。
人間はヒト型であるヒューマノイドを無視できない、と梶田さんはおっしゃっていました。そこからいろんな人がインスパイアされていくから面白いとも。完全に人間の代替となるヒューマノイドができるのは時間がかかるし、高価にはなるでしょう。でも、ホンダがASIMOで培った技術を歩行アシストに応用しているように、たとえば歩行のバランス制御は、アンカーボルトを使わない産業用ロボットに応用できるのでは、とのことでした。
永塚さんの講演は「THK 次世代ロボット事業化に向けた取り組み」でした。THKはLMガイドのパイオニアで、直動運動の転がり化を実現し、世界ではじめて製品化した企業です。他にボールねじやクロスローラーリング、アクチュエータなどの製品があります。ボールねじやクロスクローラーリングあたりは、実際にロボットにも使用されています。
さて、THKの中では、新たな事業の創出をするための部署である、事業開発統括部というところがあります。コンシューマ、電気自動車など、ビジネスユニット単位でそれぞれ分かれているそうです。永塚さんは、次世代ロボットビジネスユニットに所属されているそうです。
これまでの研究開発として紹介されたのが、NEDOの「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」「基盤ロボット技術活用型オープンイノベーション促進プロジェクト」に、JAXAの「宇宙オープンラボ」「REXJプロジェクト」です。
「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」では、人と隣り合わせで作業が可能な、安全な上体ヒューマノイドの開発を行っていました。実際に、THKの工場でも稼働しているそうです。プロジェクト自体は2008年で終了しましたが、このロボットの技術は川田工業の「NEXTAGE」につながっているそうです。

こちらが人と隣り合わせでも作業が可能な、安全な上体ヒューマノイド。人と一緒に作業している映像を見せていただきました。
「基盤ロボット技術活用型オープンイノベーション促進プロジェクト」では、簡単にネットワークに接続・動作が出来る小型通信モータドライバコントローラを開発しています。こちらは昨日(2/28)NEDOの成果報告会がありましたね。
JAXA関連では、「宇宙オープンラボ」では高出力・精細ハンドの 開発を行っています(こちらは現在も継続開発中)。宇宙服を着た宇宙飛行士並みの器用さと握力があるハンドを、小型で高推力のリニアアクチュエータシステムで実現しているそうです。

JAXAの宇宙オープンラボで開発しているハンド。
それと、「REXJ(2011年度に実施を予定している、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」船外実験プラットフォームでの有人宇宙活動支援ロボットの実証実験)」では、ハンドユニットを担当しています。今年度(2012年1月頃予定)に打ち上げ予定とのこと。
ロボマガ読者にも関心が高そうなのは、次世代ロボット向け要素部品ではないでしょうか。現在でも、次世代ロボットの開発現場では、OS、システムなどのソフトウェア環境は汎用のモノが整いつつあっても、アクチュエータやドライバなどは独自開発の場合が良くあります。その部分も、汎用品としてTHKで開発しているそうです。それが次世代ロボット向け要素部品「SEED Solutions」です。モータドライバやアクチュエータシステム。小型の低電力PCといったラインナップを予定しています。モータドライバはすでにサンプルも提供中とのことでした。どれも本当にコンパクトでした。アクチュエータシステムの検証用ロボット「THKR-4」のデモも行われました。


THKの次世代ロボット向け要素部品の「SEED Solutions」のモータドライバやプロトコルコンバータ、小型PC/AT互換機のモジュールと、アクチュエータシステム

検証用ヒューマノイドロボット「THKR-4」による、ペットボトルの受け渡しのデモ。THKR-4が永塚さんにペットボトルを渡します。このハンドに、SEED Solutionsのモジュールを使用しています。
会場は満員でした。当日受付(事前予約制ではありました)のかたも多くて、並んでいる様子に私はビックリしていました。最後の質疑応答でも、私の想像しなかった業種でもロボットを使っていることも知りました。ロボット技術の応用はひょっとしたらいくらでもあるのかも知れません。
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