「Pepper app challenge」「Pepper innovation challenge」開催レポート

2015年11月28日、ベルサーレ新宿にて、Pepperを活用した家庭用ロボットアプリケーションの最優秀作品を決定する「Pepper app challenge 2015 Winter」、ビジネスシーンにおけるPepperの活用事例を競う「Pepper innovation challenge 2015」が開催された。Pepper app challengeは今年2月にも行われ今回が2回目の開催となる。アプリケーションは事前に決勝進出のための審査が行われており、当日は決勝に進出したそれぞれ10チームのアプリケーションのデモ展示・プレゼンテーションが行われた。審査員と一般来場者による投票で最優秀賞が決められた。

最優秀賞となったチームは、Pepperの貸し出しなどソフトバンクロボティクス株式会社による支援を受けることができる。またベストエンターテイメント賞などカテゴリーに応じた賞もあり、こちらも支援を受けることができる。

他のメディアでも多く取り上げられているので、ここでは編集部が注目したプロジェクトに絞ってリポートする。

公式ホームページ

当日のようすはUstreamで見ることができる


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会場内にはPepperがあっちこっちにおり、入り口でもPepperが出迎えてくれる


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司会の長谷川杏里さん(一番左)と審査員のみなさん。審査員は左からテリー伊藤氏、森川亮氏、塩田 結以氏、蓮実一隆氏、ショーン・マクアードル川上氏、清水周一氏、富坂美織氏、吉田健一氏の豪華メンバー


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challengeの受賞チーム集合写真。app challenge最優秀賞には100万円が、innovation challenge最優秀賞にはPepper for bizの3年間無償貸与が贈られた


Pepper app challenge 2015 Winter

Pepper app challengeは、日常に根ざした家庭用アプリケーションのコンテスト。Pepperと人との共同生活を目指し、コミュニケーションロボットとしての能力を生かしたアプリケーションに賞が贈られる。 発表にも、こちらの都合に関係なくPepperが英語で話しかけてくる英語教育アプリ「Pepperがホームステイにやってきた【仮想英語環境構築アプリ】」(株式会社ジーアングル)やPepperの紙芝居がスマホでつくれる「かたりべ」(超技研@アップフロンティア)、PepperとSNSでコミュニーケーションできる「Palsbots」(パルスボッツ)など、未来の日常を感じさせるアプリケーションが目立った。

Pepper app Challlenge 2015 Winter受賞チーム
アプリケーション名称 チーム名
最優秀賞 HUG -バーチャルリアリティコミュニケーション- HUG PROJECT
ベストインタラクション賞 Pepperがホームステイにやってきた【仮想英語環境構築アプリ】 株式会社ジーアングル
ベストエンターテイメント賞 かたりべ 超技研@アップフロンティア
ベストライフスタイル賞 ペッパーソナル・トレーナー BOB
ベスト介護福祉賞 HUG -バーチャルリアリティコミュニケーション- HUG PROJECT


HUG -バーチャルリアリティコミュニケーション

最優秀賞とベスト介護福祉賞をダブル受賞した「HUG -バーチャルリアリティコミュニケーション」(HUG PROJECT)は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)やKinectを使って遠距離にいるPepperと視界や動作を共有し、遠く離れた人とコミュニケーションがとれるアプリケーション。

「寝たきりの祖母に、なんとかして結婚式に参加もらいたい」そんな思いから生まれたHUGは、高齢化社会を迎えたわれわれの社会に新しい幸せを呈示する。

今後、大容量高速のネットワークや自動翻訳技術が進めば、事故や病気でたとえ歩けなくなったとしても、海外に設置されたPepperにログインし、仮想的に旅行するといったことができるようになるかもしれない。自動翻訳もできるようになれば完璧だ。ロボットの可能性は無限大だということを感じさせた。

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HMDを通してPepperの視界を見ることができる


Pepperがホームステイにやってきた

音楽・映像・画像などを制作する株式会社ジーアングルの開発した「Pepperがホームステイにやってきた」はPepperによる英語教育アプリケーション。ベストインタラクション賞を受賞した。とある調査によると英語が身につかない一番の理由は、自身が英語環境にないことだという。対称的に一番の英語勉強は、海外に行くなどして英語がいやでも聞こえてくるような、英語が必須な環境に身をおくことだそう。

本アプリケーションは、Pepperと顔を合わせると自動的に英語学習がはじまる。時を選ばず、こちらの都合を考えずにPepperが英語で話しかけてくるので、いやでも英語を使わないといけない環境に身を置かれるというわけだ。タブレットには英会話の内容が表示されているので、リーディングの学習もできるという。

従来の自己学習は自分でやる気をだして始めないと始まらないが、このアプリはPepperが勝手に話しかけてくるので強制的に学習がはじまる。「継続は力なり」だが、なかなか根気が続かないもの。Pepperが資格試験の問題を突然出してくるアプリケーションがあれば筆者も資格取得ができるかもしれない。

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アプリのポイント。Pepperは常に勉強の機会をうかがっている


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Pepperのタブレットに英語が表示されている


かたりべ

アップフロント社の社員チーム「超技研」が開発した紙芝居アプリケーションで、紙芝居やSS(ショートショート)のストーリーをつくり、それをPepperが紙芝居してくれるというもの。動き(モーション)や音、紙芝居なのでもちろんイラストも設定できる。使う素材には、アプリに登録されたデフォルトのものが用意されているが、カメラで撮った写真やボイスレコーダーで録音した音も使うことができる。 プレゼンテーションにはやや失敗し、テリー伊藤氏には「プレゼンが下手だが技術はすごい!」と強調され、会場に笑いが起きた。

紙芝居は一時停止もできるので、止めているあいだに保母さんが「この後どうなるのかな」などと児童に聞くことなどもでき、保育園などでの活用が考えられるという。 将来的にはPepperによる紙芝居的な学習講座やプレゼンをつくることも可能に思われた。

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Pepperのタブレットに浦島太郎のスライドが表示されている


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用意されたアイテムを組み合わせて紙芝居をつくる


Palsbots

パルスボッツ「Palsbots」はPepperとの会話がグループSNSにアップされる新時代のSNS。Pepperは前にした会話を覚えていて、徐々に学習していく。Pepperどうしが会話をすることもあり、これも反映されるそうでなかなか面白い。 仲間たちとのグループチャットにPepperが介入してくる新未来はすぐそこと感じられた。

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右奥のモニタにチャットのようすが表示されている。写真はPepperの視界だ


Pepper innovation challenge

Pepper innovation challengeは、Pepperのビジネスでの活用事例を競うアプリケーションのコンテスト。オフィスや一般商店、介護施設など、さまざまな場所を舞台としてPepperを活躍させたアプリケーションに賞が贈られる。 脳トレや介護施設での活用、顧客来社時の受付(電話)、デジタルサイネージなど、まさにビジネスといった活用事例が目立った。双方向性を意識したアプリケーションが多く、顧客との円滑なコミュニーケーションを確立するために役立てられている。

Pepper innovation challenge 2015 受賞チーム
アプリケーション名称 チーム名
最優秀賞 いきいき脳体操 Team Smart Brain
ベスト接客ビジネス賞 待ちの不満を解決する受付管理アプリAirウェイト Airウェイト
ベストヘルスケアビジネス賞 介護施設向けJOYSOUNDペッパーアプリ TEAM JOYSOUND
ベスト顧客体験賞 ペパ電 for Biz フューブライト・コミュニケーションズ株式会社
ベストテクノロジー賞 店頭向けデジタルサイネージアプリ Vipper チームエビリー


介護施設向けJOYSOUNDペッパーアプリ

最優秀賞を受賞した「いきいき脳体操」(Team Smart Brain)と同じように、今後の高齢化社会を見据えてPepperの介護施設での活用を模索したアプリケーション。 本アプリは、現在はインストラクターが行っている体操や歌などのレクリエーション作業をPepperが代行してくれるといったもの。

実際に介護施設などにPepperを連れて行ったところ、高齢者は非常によろこんでくれ感情移入してくれたそうだ。

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Pepperがいっしょに歌ったり踊ってたりしてくれる


ペパ電 for Bizz

「ペパ電 for Bizz」はPepperを電話にできるアプリケーション。IP電話にも対応しており、オフィスの受付などに活用できる。

特徴としてはPepperが『ちょっとお節介をしてくれる』ことで、受付に訪れた人が呼び出した相手を呼びだしている間に、「○○は今月の営業成績が悪くて...」といったいいづらい本音や「娘さんの誕生日プレゼントを探しているらしいよ」といったちょっとした話題などをPepperが話してくれる。するとその後の商談がスムースに進むという。

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Pepperが会社の受付になる時代がくる?


Pepperのディベロッパー向けサポート

当日はソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進本部 本部長の吉田健一氏によるPepperのディベロッパー向けのサポートについても発表があった。報道資料に詳しいが、なかなかSoftbankの本気を感じさせる内容となっていると感じられた。ここでは当日のスライドとともに発表を振り返ろう。

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Pepperパートナープログラムの発表。Pepper for bizの開発者向けサポートでアプリ開発、コンサルティング、UXデザインの3つを上げた。アプリ開発サポートは12月から開始する

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パートナーになるための認定プロセス。実技と筆記の試験があり、認定を受けたパートナーはSoftbankがアプリケーションのクォリティを保証する。すでに200社以上がエントリーし、60社が認定を受けているとのことだ。パートナーになると3つの技術サポート、3つの事業サポートを受けることができる

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技術サポートの1つ目は12月から開始するテクニカルサポート。チケット性の技術的なサポートだ

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トレーニングや支援ツールのサポートでは、ライブラリや導入環境の調査シートといったものが提供される

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ロボアプリの安全性審査のサポート。この審査を受けることでPepper fo bizの基本プランの保証に故障がサポートされ、アプリケーション起因によるPepper故障などの場合もSoftbankのサポートを受けることができる

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Pepperアプリの開発案件紹介サポート。Softbankが吸い上げた顧客ニーズとディベロッパー間のマッチングをSoftbankが提供するといったもの

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作成したアプリケーションを顧客に販売する法人向けアプリストア「For Bizアプリストア」の開設。Softbankが選定したアプリケーションをストアで販売する。ライセンスビジネスなども活用できる。課金やプロモーションなどもSoftbankが担当する

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Softbankによる販売促進支援プログラム。年明け以降、アプリケーションをPRするさまざまな展示会やセミナーを企画しているという

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「Pepperアトリエ サテライト」として、Softbankの認定を受けることで日本全国の団体、個人、企業がアトリエを開設することができるしくみを提供する。ヤマハの音楽教室を参考にし、あちこちにロボット教室を展開することで、ロボットが一家に一台を目指すという。すでにいくつかの企業と協業を始めており、12月に8拠点がオープン、2016年中に50拠点を目指すという。サテライトとなる場合には特典として、公式のステッカーやPepperグッズの利用、「Pepperアトリエ秋葉原」のノウハウの提供、ワークショップのPRのサポートなどを受けることができる

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「ロボアプリLab」はKickstarterのようなしくみでクリエータとユーザとの架け橋を提供する。投票により人気の高いものを開発。開発したアプリはPepperの基本アプリケーションとして搭載され、Softbankからライセンス支払いを受けることができる


ディベロッパー懇親会

盛り上がりを見せたchallengeの授賞式の後には開発者をまじえた懇親会が行われた。懇親会では食事が振る舞われ、発表までとは打って変わって大分ゆるい空気に。はじめにソフトバンクロボティクス株式会社取締役の蓮実一隆氏による挨拶と乾杯の音頭があった。

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しばしの歓談ののち、「共創のまち・肝付」プロジェクトを主催する株式会社たからのやまの奥田さんが登壇。高齢者の声、地域住民の声を聞き、開発者とユーザ、一般の方がいっしょに開発を行うプロジェクトについてスピーチがあった。製品を市場にドロップして反応を見るのではダメで、高齢者の方などが本当に必要とするものを吸い上げて開発を行うことが重要と強調した。

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株式会社たからのやまの奥田さん


続いて、ロボットスタート株式会社の北構武憲氏により、Pepper app challenge、innovation challengeそれぞれの受賞者へのインタビューが行われた。

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最優秀賞を受賞したチームへのインタビュアーとして登壇したロボットスタートの北構武憲氏。


Pepper app challengeの最優秀賞「HUG -バーチャルリアリティコミュニケーション」(HUG PROJECT)。

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「いけるかもというのはあったが、その次の日にはこれはもう無理かもといった絶望と希望の繰り返しだった。開発はSkypeでコミュニケーションし、それぞれが作ってきたものをつなげてガッチャンコした。ただ、実際に物を動かさないといけないのでアトリエ秋葉原を有効活用した」


Pepper innovation challengeの最優秀賞「いきいき脳体操」(Team Smart Brain)のお二人。

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「(仙台放送の)番組は日本国内と海外で放送しているが、お年寄りがそれをみるとは限らない。まして施設にいる方は自分にチャンネル権があるわけでもない。そういったことからだいぶ前からテレビのコンテンツを、お年寄り向けのゲームにできないかとは考えていた。国際福祉機器展でそういったコンテンツを発表したところPepperと出会って、そこから急速にこの世界に足を踏み入れた」

「ロボットのアプリケーションは現場で実際に動作して見えるので作る側として非常にモチベーションになった。楽しみに来てくれる方にちゃんとエンターテインメントを届けたい」


懇親会の最後にはTシャツやPepperの危機一髪がもらえるじゃんけん大会が行われ、盛り上がりのうちに懇親会は閉幕した。




懇親会中にソフトバンクロボティクス株式会社 事業推進本部 本部長の吉田健一氏にお話しをうかがうことができたので、本記事の終わりに紹介したい。


―今回の受賞には介護福祉や学習が目立ちましたが、これについてどのように考えていますか。

(介護福祉や学習といった分野は)道のりが長いと考えています。今回は最優秀賞ではなかったですが、小売りや接客といったものはすでにできあがっていると考えています。今後も投資して、つくっていかなければいけない分野として介護や教育だったりが注目されてきていると考えています。

―Pepperのコミュニケーションを活用したアプリが多かったと思いますが、これをeコマースに生かし、分析やデータ解析を行っていくといった話がありました。これらは最近はやりの機械学習など難しい処理だと思います。他社はソフトウェア会社と組んで、環境を提供するなどしていますがソフトバンクとしてはどのように考えているのでしょうか。

学習で大事なのはアウトプットの処理よりも認識だと考えています。ロボットならではの「近くに人がいます」「この人は男性です」「この人とはこんな話としました」といった認識さえできてしまえば、ディープラーニングのような話ではなく、if thenで問題ありません。認識ができるかどうかが今までの課題だったわけです。その認識がこれまでより格段にできるようになった。ウェブはクリックだけですが、Pepperなら何でも(データを)取れる。直接聞いて、取ることもできます。その後の学習は今日来ていただいているパートナーの皆さんが実現してくれると考えています。

―小型のPepperというは考えているのでしょうか。

将来的にでてくる可能性は否定はしません。ですが、最初になぜあの大きさが必要だったかというと、人間が生き物として認識できるかどうかにこだわっていたからです。小さいとおもちゃだと思ってしまいます。この大きさのPepperが話しかけてくると「おおっ」となるのです。あの大きさのインパクトがあります。

―今後の展開を教えてください。

法人のほうはすぐに使えるレベルになっています。あとは現場でどうイノベーションが起きるかが勝負で、すごく楽しみにしています。個人のほうは、まだあと三段階は必要だと考えています。今日発表したアトリエだったりLabだったりで新しいものがでてきて、お客様を巻き込んでいけるかだと思っています。

―本日はありがとうございました。




大分長い記事となってしまったが会場の雰囲気がつかめただろうか。両challengeは一般の方でも観覧できるイベントであるので、興味をもたれた読者は次回ぜひ参加し、ロボットと人間が共生する社会を感じてほしい。

リバスト

タマディック

アフレル

三和電気計器

ツクモROBOT王国

ヴイストンロボットセンター

秋月電子通商

近藤科学

Robotma.com

双葉電子工業

ロボット検定

国際ロボット展

 

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