内容紹介
画像生成AIと著作権について、イラストレーター・エンジニア・弁護士の3人と一緒に考えよう
画像生成AIの急速な一般化に伴い、学習データや出力された画像に関して、法的・倫理的な議論が行われています。本書では、イラストレーター・AI開発者・弁護士というそれぞれ異なる立場の3名が、AIイラスト周辺の権利や倫理について説明や議論を行います。
画像生成AIと権利をめぐる議論には、著作権法を中心とした法律の知識と、生成系モデルを中心とした機械学習の知識、さらにイラスト制作の技術や当該分野における慣習などのクリエイティブ業界の知識という異なる3分野の知見が必要となります。また、新技術として社会実装されるためには、「適法か否か」という論点だけでなく、「倫理的に正しいといえるのか」「ビジネスとして成立しうるのか」など、複数の視点からの問題提起が必要となります。
本書では、3分野における基礎知識を説明しながら、画像生成AIの課題と可能性を指摘していきます。画像生成AIの学習データや出力に対して疑問をもっている方や、逆に画像生成AIを利用しており商用利用も考えている方など、立場問わず生成AIに関心のある方を広く読者対象として想定しています。
<本書のポイント>
・立場の異なる3人のプロが、50の質問に対して回答します
・画像生成AIをめぐる問題を広く取り上げ、法だけでなく倫理やビジネスなど複数の側面から議論します
画像生成AIと権利をめぐる問題を整理しよう
現時点では、画像生成AIをめぐる問題の多くは「これが正解」という端的な回答が得られるものではありません。法的な問題は判例がなく明言できる要素が多くありませんし、倫理的な問題は立場や価値観によって基準が左右されます。
そのため、本書は「議論への正しい回答を示すこと」ではなく、「それぞれの立ち位置からの見解を示し、課題や可能性を指摘し、知識を共有すること」を目的としています。
最初に画像生成AIと著作権をめぐる基本的な説明を行ったのち、技術的な解説を行い、さまざまなモデルや学習データなどの問題に踏み込んでいきます。
50個の質問をもとに3人のプロが解説
回答を行うのは、画像生成AIを試してみたことがあるものの「現時点では絵描きのための補助ツールとはいえない」としているイラストレーター、著作権のない画像(パブリックドメイン、CC0)と許諾のとれた画像だけを学習する画像生成AI「Mitsua Diffusion One」の開発者であるエンジニア、知的財産権を専門としている弁護士の3名です。
鼎談形式でスルスル読める
50個の質問に対する回答は、鼎談形式でまとめられています。
また、専門用語や出典は脚注にまとめられており、確認しながら読み進めることができます。
このような方におすすめ
◎イラストレーター
◎画像生成サービス利用者(AI絵師、AI術師)
◎生成AIの開発者
〇ライターや作曲家など、イラスト以外の分野のクリエイター
○画像生成AIを仕事に利用しようと考えている社会人
目次
主要目次
Chapter 1 画像生成AIと著作権の基本
Chapter 2 生成モデルと著作権
Chapter 3 学習データをめぐる問題
Chapter 4 生成AIをめぐるトラブルと対処法
Chapter 5 画像生成AIの課題と未来
補論 著作権法の基本
詳細目次
はじめに/目次
Chapter 1 画像生成AIと著作権の基本
Q1 画像生成AIってなんですか?
Q2 作者に無断でAIにイラストを学習させるのは違法ではありませんか?
Q3 なぜ作者に無断でイラストを学習させることが許可されているのですか?
Q4 日本と海外では著作権法に違いがあります。国内では適法だとしても、他国のイラストを学習した場合は違法になりませんか?
Q5 SNSのプロフィールにAI学習禁止と書くことには意味がないといわれます。本当ですか?
Q6 AIで生成されたイラストに著作権はありますか?
Q7 創作的寄与とは、具体的にどういった行為を指しますか?
Q8 AIイラスト集を作った場合、このイラスト集の編集著作権は認められますか?
Q9 AIイラストの商用利用は可能ですか?
Chapter 2 生成モデルと著作権
Q10 画像生成AIは、なぜ2022年から突然実用化され一般化したのですか?
Q11 生成モデルってなんですか?
Q12 拡散モデルについて、もう少しくわしく教えてください。
Q13 学習用のイラストでノイズの除去のしかたを学ぶということは、結局のところ、生成AIが作っているのは学習用イラストのコラージュなのではありませんか?
Q14 類似性ってなんですか?
Q15 依拠性ってなんですか?
Q16 t2iよりi2iのほうが問題が多いと聞きます。それはなぜですか?
Q17 依拠性と類似性が認められるかどうか、プロ以外が推測するための基準はありますか?
Q18 画像生成AIは、なぜ学習したイラストとほぼ同じものを出力してしまうことがあるんですか?
Q19 ControleNetなどによる構図の指定は創作的寄与と認められる可能性がありますか?
Q20 アメリカで「プロンプトで生成された絵に著作権を認めない」という著作権局の判断が出ました。プロンプトの創意工夫は著作権の有無に寄与しないと考えてよいですか?
Q21 どうすればAIイラストに著作権が認められるようになりますか?
Q22 著作権が認められない可能性があるかぎり、仮に有益だとしても、AIはクリエイターにとってリスクでしかありません。加筆などにより著作権が認められる可能性はありますか?
Chapter 3 学習データをめぐる問題
Q23 人間の創作物をいっさい学習させずに画像生成AIを作ることはできますか?
Q24 許諾のとれたイラストだけを学習させればいいのに、なぜそうしないのですか?
Q25 高品質な出力が可能な画像生成AIはリークモデルを使っていると聞きました。リークモデルとはなんですか?
Q26 Danbooruとはなんですか? また、DeepDanbooruとはなんですか?
Q27 なぜ無断転載ばかりのDanbooruのデータで学習を行うのですか?
Q28 大規模なモデルでは学習画像が自動収集されていると聞きました。これは法的に問題ないのですか?
Q29 特定個人のイラストで集中的にファインチューニングしたLoRAモデルの出力は、類似性と依拠性が認められて著作権侵害となりうるのではありませんか?
Q30 プロンプトに「○○風」など特定のブランド名や個人名を入れる場合があります。出力が「○○」の作風と近しい場合、権利侵害の可能性はありませんか?
Q31 パブリックドメインの作品だとしても、学習利用は同一性保持権の侵害になるのではありませんか?
Q32 あなたが考える「クリーンな学習」とはなんですか?
Chapter 4 生成AIをめぐるトラブルと対処法
Q33 AIにイラストを学習されたくありません。いまできる現実的な対策を教えてください。
Q34 画像生成AIの使用により権利を侵害されたと感じたときの相談先を教えてください。
Q35 i2iの出力で、他人のイラストを入力したのではないかと思える例があります。指摘して偶然だと主張された場合、どう対処すればよいでしょうか?
Q36 フリーランスや趣味で活動しているイラストレーターは法的に責任を問えそうな被害に遭っても件数が多ければ対応しきれません。どうすればよいでしょうか?
Q37 納品されたイラストがAI生成かどうか確認する方法はありますか?
Q38 画像生成AIによる出力が意図せず他者の作品と酷似したものになってしまい、作品の作者から指摘を受けました。どうすればよいでしょうか?
Q39 AIイラストをコンペやコンテストに出品・応募することはできますか?
Q40 発注を受けてAIイラストを制作・納品する場合の注意点を教えてください。
Q41 イラストサイトやSNSにAIイラストが大量に投稿されることにより、人間の描く作品がユーザーの目に触れる機会自体が減少しています。対処法はありますか?
Q42 画像生成AIの発達に伴って、ディープフェイクの問題が大きくなってきました。ディープフェイクの判別は可能なのでしょうか?
Q43 生成AIはクリエイターの著作物がなければ成立しません。クリエイターに対する還元が必要ではありませんか?
Chapter 5 画像生成AIの課題と未来
Q44 人間のイラストとAI生成画像とのあいだには、どのような違いがあると思いますか?
Q45 AIを試してみたいイラストレーターは、どんなことに気をつけて始めてみたらよいでしょうか?
Q46 日本発の画像生成AIサービスに世界的にメジャーなものはないように感じます。なぜおくれをとっているのでしょうか?
Q47 画像生成AIは、今後どのような方向性で技術発展していくと考えていますか?
Q48 それぞれの立場から、現時点の画像生成AIとクリエイターの関係について意見を述べてください。
Q49 それぞれの立場から、現時点の画像生成AIにおいて課題だと考えていることを教えてください。
Q50 人間と画像生成AIの理想的な在りかたとして、あなたが求めることはなんですか?
補論 著作権法の基本
索引
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