内容紹介
CO2排出削減の切り札「人工光合成」について,トヨタグループの中央研究所が研究開発を進める技術の基礎をわかりやすく解説
本書は,人類共通の課題である二酸化炭素(CO2)排出削減の切り札「人工光合成」について,トヨタグループの中央研究所が研究開発を進める技術の基礎をわかりやすく解説した書籍です.複雑な天然の人工光合成を過度に模倣するのではなく,二酸化炭素と水と太陽光エネルギーから化学原料や燃料として活用可能な有機物を,化石資源の熟成と比べてきわめて短時間で合成可能な機構と手段を獲得する技術について説明します.
本書で主に解説している,半導体光触媒と金属錯体分子触媒の研究は半世紀前から始まりました.これら両者の機能を融合したハイブリッド光触媒,および光電極は, 2010年代に人工光合成の新しいアプローチとして注目を集めた技術です.現在,将来の社会への貢献を目指して急ピッチで研究開発が進められています.これから,電気電子分野,化学分野,生物分野で活躍する若手研究者・技術者,および,学生にとって必読の書籍です.
このような方におすすめ
電気化学(電池)の研究者・技術者・実務者、および学生
無機化学(触媒)の研究者・技術者・実務者、および学生
目次
主要目次
第1章 人工光合成とは何か
第2章 人工光合成への期待
第3章 人工光合成系と触媒
第4章 光触媒による人工光合成
第5章 光電極による人工光合成
第6章 人工の葉
第7章 大型の人工光合成セル
第8章 高価値化
第9章 高出力化
第10章 人工光合成研究の今後
付録 光CO2還元系の実験方法
詳細目次
序 章 人工光合成の研究開発の目標
第1章 人工光合成とは何か
1.1 人工光合成とは
1.2 大気中のCO2濃度上昇
1.3 CO2の性質
1.4 天然の光合成がかかわる炭素循環
1.5 光合成のしくみ
第2章 人工光合成への期待
2.1 CO2と地球温暖化
2.2 利用可能な自然エネルギー
2.3 CO2がかかわるエネルギー貯蔵と炭素循環
2.4 人工光合成の実証へのアプローチ
2.5 人工光合成の効率
第3章 人工光合成系と触媒
3.1 人工光合成の要素技術
3.2 太陽光エネルギーによるCO2還元反応
3.3 人工光合成の方式と触媒
3.4 CO2還元反応を駆動する触媒
3.5 半導体光触媒によるCO2還元反応
3.6 金属や無機化合物触媒によるCO2還元反応
3.7 H2Oの酸化反応を駆動する触媒
3.8 溶液と電子供与剤
3.9 CO2還元反応とH2O酸化反応の連結
3.10 太陽光変換効率と量子収率
第4章 光触媒による人工光合成
4.1 光触媒系と光電気化学系
4.2 CO2を還元する助触媒の重要性
4.3 半導体-金属錯体触媒ハイブリッド光触媒
4.4 可視光による半反応
4.5 可視光による全反応
4.6 反応機構の解析
4.7 金属錯体光増感剤と金属錯体触媒を連結した光触媒
第5章 光電極による人工光合成
5.1 半導体-金属錯体触媒ハイブリッド光電極
5.2 可視光による半反応
5.3 太陽光による完全反応
5.4 元素戦略を意識した研究開発
第6章 人工の葉
6.1 究極の形態の実現
6.2 触媒の機能
6.3 人工光合成素子による太陽光CO2還元
第7章 大型の人工光合成セル
7.1 1室・1溶液方式の大面積化
7.2 太陽光変換効率と電極サイズの進展
7.3 大型人工光合成系の課題
第8章 高価値化
8.1 触媒開発
8.2 C2化合物およびアルコールなどの合成
8.3 PNNP配位子を有する頑強な金属錯体光触媒
第9章 高出力化
9.1 金属カチオンとカーボン担体の効果
9.2 大出力を実現するガス拡散電極リアクター
9.3 異種太陽電池の複合化の最適設計
9.4 半導体のホットキャリアの利用の可能性
9.5 太陽光スペクトル分割法の影響
第10章 人工光合成研究の今後
10.1 国内外における太陽光CO2還元系の研究
10.2 合成化合物の選択と活用の提案事例
10.3 半導体/金属錯体ハイブリッド方式の課題
付録 光CO2還元系の実験方法
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