内容紹介
物理教育に関わる方々の必携の一冊! 物理教育研究(PER)に基づいた内容で、確かな手応えのある教育・指導の実践をサポート
本書は、現代の物理教育研究(PER)の実績をもとに、生徒・学生にとってわかりやすく(かつ楽しく)物理を学ぶことのできる授業・講義や教材づくりの実践法をまとめたものです。
物理教育という研究分野が21世紀に入り大きく発展し、定量性、再現性、予言性のある研究成果が急速に積み上げられてきています。これにより、生徒・学生の概念理解度や授業効果を定量的に測れるようになり、効果的な授業方法も開発されるようになっています。
従来、「どこで生徒・学生がつまずくのか」「教育効果の高い授業法はどのようなものか」といったことは、経験を積まなければ獲得できなかったとされています。しかし、PERの成果を応用すれば、新任の教員でも経験を積んだベテラン教員と同等以上の授業が展開できます。長年にわたり解決の糸口が見えていない「理科離れ」「物理嫌い」に対する打開策を見出しつつあるPERの知見をわかりやすく紹介することで、物理教育の共通認識を広めつつ、より良い授業・講義や教材づくりに資する、広く物理教育に関わる方々の座右の書となるものです。
このような方におすすめ
・高校~大学教養課程の物理学を指導する立場にある,教員等,教員を志望する学生
・物理教育(理科教育)に興味をもつ学生・教員・研究者・一般の方々
・教育行政に関わる方々
目次
主要目次
第1章 物理教育研究(PER)
第2章 授業方法(1)物理を伝える表現
第3章 授業方法(2)相互作用型授業の実践方法
第4章 レッスンスタディと物理授業改善
第5章 教材研究
第6章 物理教育研究に基づく学習評価
第7章 概念的理解からモデル化へ―高い教育効果はどこから生まれるか―
詳細目次
第1章 物理教育研究(PER)
1.1 物理教育研究とは
1.1.1 学校と教育
1.1.2 教育の研究とは
1.1.3 物理教育研究の対象
1.2 学生の考えや発想
1.2.1 素朴概念と物理法則
1.2.2 素朴概念の研究手法
1.2.3 MIF素朴概念
1.2.4 素朴インペタス理論
1.2.5 Pプリム
1.2.6 知識の錯覚
1.2.7 さまざまな素朴概念の例
1.2.8 日常現象に物理法則を当てはめることの難しさ
1.3 効果的な授業とは
1.3.1 伝統的な講義形式の授業
1.3.2 良い講義型授業とは
1.3.3 相互作用型授業
1.3.4 相互作用型授業の意義
1.3.5 相互作用型授業の進めかた
1.3.6 素朴概念を科学概念に変えるには―概念変容―
1.4 授業の定量的な評価
1.4.1 自分の授業を評価するには
1.4.2 概念調査問題をつくるには
1.4.3 授業効果を測定するには―規格化ゲイン―
1.4.4 学生個人単位の授業効果
1.4.5 「学びに向かう態度」を評価する
1.5 授業の難しさ
1.5.1 学生は授業に何を期待しているのだろうか
1.5.2 学習の転移は難しい
1.5.3 研究者としての教員像
参考文献
第2章 授業方法(1)物理を伝える表現
2.1 多重表現
2.1.1 加速度の表現
2.1.2 多様な表現をどう構成するのか
2.1.3 効果的な表現を目指して―物体が受ける力と力のつり合いの関係―
2.2 エネルギー保存の法則と多重表現
2.2.1 エネルギー保存の法則とは何か
2.2.2 学生の「仕事とエネルギー保存の法則」の理解
2.2.3 エネルギー保存の法則理解のための多重表現の活用
2.3 表現能力
2.3.1 多重表現と問題解法スキル
2.3.2 物理を伝える数式表現
2.3.3 表現能力を評価する試み
2.4 アナロジーによる概念形成
2.4.1 アナロジーとは
2.4.2 電流回路の水流アナロジー
2.4.3 アナロジーによる科学教育
2.5 アナロジーから物理モデルへ
2.5.1 「水流モデル」から物理モデルへ
2.5.2 電流回路の物理モデル
2.5.3 物理モデルで考える電気回路
2.5.4 探究の過程を支えるアナロジーと物理モデル
参考文献
第3章 授業方法(2)相互作用型授業の実践方法
3.1 Interactive Lecture Demonstrations(ILDs)とは
3.1.1 ILDsの展開
3.1.2 使用器材
3.1.3 力学分野(1次元)の概要
3.1.4 実践例1―ニュートンの第3法則―
3.1.5 電気分野(直流回路)の概要
3.1.6 実践例2―直列回路と並列回路―
3.1.7 実践における留意点
3.2 ピア・インストラクション
3.2.1 ピア・インストラクション―最も簡単な相互作用型授業―
3.2.2 高等学校物理基礎をPI型授業で教える
3.2.3 PI効率で議論しやすい問題・しにくい問題を見いだそう
3.2.4 おわりに
3.3 玉田方式(到達目標学習課題方式)の授業
3.3.1 玉田方式の授業はこのように進む
3.3.2 1時間の授業運営はこうしたい
3.3.3 単元のプランニング
3.3.4 到達目標学習課題方式はここがすごい―おすすめポイント―
3.4 仮説実験授業
3.4.1 仮説実験授業とは
3.4.2 仮説実験授業の授業運営法
3.4.3 授業書―仮説実験授業を特徴付けるもの―
3.4.4 何をもとに授業を評価するか
3.4.5 仮説実験授業の根底にある思想―なぜたのしさを重視するか―
3.4.6 仮説実験授業と「たのしい科学の伝統」
3.4.7 高校における仮説実験授業の実際
3.4.8 おわりに―物理教育の目的は何か―
参考文献
第4章 レッスンスタディと物理授業改善
4.1 授業研究/レッスンスタディとは?
4.1.1 授業研究の発祥
4.1.2 日本の授業研究の形態
4.1.3 レッスンスタディの広まり
4.1.4 米国のレッスンスタディの形態
4.1.5 授業研究とレッスンスタディの相違
4.2 授業研究に期待される効果
4.2.1 授業改善と教員の指導力向上
4.2.2 学習者の学力向上
4.2.3 同僚性の育成
4.2.4 授業研究が講演会と異なる点
4.2.5 授業研究と学習指導要領
4.3 理科の授業研究の事例を見る
4.4 大学物理でも授業研究
4.5 オンラインでも理科授業研究
4.6 授業研究のこれから
参考文献
第5章 教材研究
5.1 物理教育において問題の果たす役割とは
5.1.1 なぜ問題を解かせるか
5.1.2 典型的な演習問題の裏にも誤概念が隠れている
5.1.3 授業における問題の果たす役割①―概念獲得のための問―
5.1.4 授業における問題の果たす役割②―①とは異なるねらいの問―
5.1.5 探究活動における問題の果たす役割
5.1.6 宿題における問題の果たす役割
5.1.7 どのように問題を設計するか
5.2 ICT活用
5.2.1 時代[とき]は来たれり!―そのハードルは低くなっている―
5.2.2 ICT活用、何がうれしいの?―具体的な授業の場面から考えよう―
5.2.3 物理におけるICT活用のメリットについて考えてみる
5.2.4 ICTを活かした物理授業、どんなものが考えられるか?
5.2.5 ICT教材を作成するとき、どんなことを意識するとよいか?
5.3 概念獲得のための教材の研究
5.3.1 著者勤務校における30年弱にわたる実践より
5.3.2 授業アンケートと概念獲得状況調査の比較から
5.3.3 米国研究留学での学びと収穫について
5.3.4 今後の課題を考える
5.4 欧米の物理教材を日本の高校物理教育に導入するにあたって考えてきたこと
5.4.1 アドバンシング物理研究会(AP研)の活動について
5.4.2 欧米の物理教材を日本の物理教育に導入するために―AP研での研究スタイル・公開講座の実施―
5.4.3 イギリス・アドバンシング物理を導入する試み
5.4.4 ILDsを中心としたアクティブ・ラーニング型の授業の取り組み
5.4.5 これからの高校物理教育に向けて
参考文献
第6章 物理教育研究に基づく学習評価
6.1 授業の効果はどのように測る?
6.2 学習評価とは何か
6.2.1 学習評価とは何か
6.2.2 学習評価と成績評価の相違点
6.3 学習評価の方法
6.3.1 学習評価の方法
6.3.2 物理教育研究における学習評価
6.3.3 研究に基づく評価ツールの例
6.3.4 評価ツールの利⽤方法
6.3.5 評価ツールを⽤いた調査分析
6.4 評価方法の妥当性
6.4.1 評価方法の妥当性とは
6.4.2 評価ツール⾃体の妥当性
6.4.3 評価ツール選択の妥当性
6.4.4 物理教育研究の実証性
6.5 まとめ
参考文献
第7章 概念的理解からモデル化へ―高い教育効果はどこから生まれるか―
7.1 講義が中心ではない授業
7.2 マクダーモットの物理教育研究から生まれた2つの授業
7.2.1 マクダーモットらの物理教育研究と教材開発の成果
7.2.2 物理教育研究の基本的なスタンスおよび洞察
7.2.3 ワシントン大学物理教育研究グループの具体的な研究方法
7.2.4 講義に頼る授業への批判
7.2.5 コースの目的と進み方
7.3 マクダーモットらの課題
7.3.1 概念的理解・定性的推論を促す課題の例
7.3.2 ガイドされた探究の観点が生きている課題の例
7.3.3 原理的な思考を促す魅力的な課題の例
7.4 モデリング授業
7.4.1 モデリング授業とは何か
7.4.2 力学の授業は6つのモデリングの学習として組織される
7.4.3 授業の様子
7.4.4 通常の物理コースとの対比
7.4.5 なぜモデリング授業の教育効果は高いのか
7.5 まとめ
参考文献
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